姫と
従者
雨が降るとよく思う。
貴方は今何処にいるのだろうか?
雨は思考を攫う。
涙を消す。
誰よりも強がりで、誰よりも弱虫な貴方は…
雨の日雨の中、何を考えているんですか?
†惑う雨†
ポツ…ポツ…
雨が降る
雨が全てを流すように、私を流す。
思考を…攫った
暗闇に落ちる
暫くしても視界は開けず、ただ呆然とする。
景色が変わる。
真っ赤な…視界一面に広がる綺麗な紅葉。
さっきまで私は学校にいたのだ。
だからこれは夢だ。
分かっている
でも、この景色には覚えがある
ずっと昔。
知りたいと願った情景。
けれど私の中の何処かで、見たくないと言っているものがいる
その思いは届かず、虚しくも情景は流れていく。
姫」
その声は私を呼んだ
「何か用ですか?言蔵。」
「いえ、別段ご用はないのですが…」
そう言って、少し黙る
「では何か?」
「…姫が何処かへ勝手に出て行かないようにと思いまして。」
「…それでは、私が大人しくないと言っているようなものではないですか。」
「姫は大人しくないではありませんか。」
「何を根拠にしてですか?言蔵。」
「いつも、結界を確かめるといいながら森を徘徊しているところです。」
「ちゃんと結界も見ていますよ?」
これは…千年前の玉依姫の記憶?
ザザ…
情景に砂嵐がかかり、暫くして違う情景が映し出される
「おやめください、姫!」
「言蔵!…黙りなさい。」
「……………っ!」
「私は…鬼斬丸を解放したのに、“鬼”を殺さなかった…」
私は…玉依姫なのだ
「完全に解放された鬼斬丸を封印するには…
私の命を使うほか、方法はない。」
「姫は…酷いお方です…‥私が…私がどれほど、
姫を想っているのか知っていながら…
私にそのようなことをおっしゃるのですから……。」
「言蔵…私は−−−
「……さん…珠紀さん。」
声が聞こえた
「し…んじ…君?」
「そうですよ。何だか、珠紀さんが
泣いているような気がして探していたんです。」
「私…泣いてないよ?」
「嘘です。……何か…悲しい事でも有ったんですか?」
悲しい…事…
「……遠い…遠い昔の夢をみた気がする」
そう…遠い…遠い
「千年前のお話」
千年前の玉依姫と言蔵のお話
「貴方は優しい人です。」
そう…優しい
「貴方は優しくて、強がりで、誰よりも泣き虫だから…
僕は貴方が心配なんです。」
「心…配?」
「もう…雨でごまかさなくていいんです。悲しいことは、
僕も貴方と一緒に背負います。だから…独りで泣かないでください。」
千年前の貴方は独りで何もかもを背負って逝ってしまったから…
「貴方のそばに、僕はいつもいます。」
その言葉は千年前から願った言葉…
「ありがとう、慎司君。」
『私は…優しく、いつも私を助けてくれる貴方が大好きでしたよ…』