望みは解放
後編



  「珠紀先輩、どうかしたんですか?」

  珠紀は、心配そうに聞いてくる慎司の声でぼやけていた思考がはっきりとした

  「どうもしないよ?」

  「そうなら良いんですけど・・・・何だか”心ここにあらず”でしたよ?」

  「そう・・・・だね。心は・・・」



  ”姫・・・私を解放してください”
    



  「あの時確かに・・・アナタに心を奪われたのよ」




  珠紀の言葉に、その場に居た守護者全員が珠紀を見つめる

  「・・・・珠紀?」

  「だって、あの後アナタは死んだんだもの」

  「先輩?」

  「私が解放する前に死んじゃったんだもの!!!」

  体が操られる

  心が麻痺する

  「珠紀!!!!」

  「心を奪われた・・・それは・・・・」

  「おい!珠紀!?」

  倒れそうになった珠紀を、真弘がギリギリのところで抱きとめる

  「・・・・真弘・・・珠紀は?」

  「大丈夫だ。意識が無いだけだからな・・・」

  「いったい何だったんだ?」

  「そうですね・・・まるで誰かに・・・」

  操られているかのように

  


  ”姫は私を思い出しましたか?”

  ”・・・アナタは・・・”

  ”姫をお迎えにあがったのです”

  ”・・・・可哀想なカミサマ・・・”

  ”可哀想・・・ですか?”

  ”うん・・・あの時私がアナタを”

  行かせてしまったから

  ”あれは私が決めた事です”

  ”あなたはとても優しいカミサマだったのに”

  ”私は・・・もう元には戻れないのです”

  だから

  ”だから、自分の意思とは関係なくても私を連れて行くの?”

  ”出来れば連れて行きたくない・・・でも”  

  ”私は千年前の玉依姫じゃないよ?”

  ”体が自由に動かぬのです。体が、貴女を・・・玉依姫を攫えと”

  ”玉依姫なら、誰でもいいんだね”

  ”きっとそうなのでしょう。・・・欲求を埋めるためならば”

  ”あなたはとても優しいカミサマなのにね”

  ”すみません・・・・・・・・・・珠紀さん”


 

  アナタはちゃんと、私の名前を知っているんだから

  大丈夫だよ

  ちゃんと玉依姫を理解しているじゃない

  私の中の玉依姫が、アナタにむけていた感情がわかっているじゃない

  わかっていても・・・捨てられなかったアナタの気持ちが

  ただ暴走しているだけなんでしょう?




  「・・・き・・・珠紀!!!」

  「・・・・・真弘・・・先輩?」

  「珠紀大丈夫か?」

  「拓磨・・・」

  「珠紀・・・・先刻の事覚えているか?」

  「・・・・・・いいえ」

  覚えている

  でも

  「私さっき何かしましたか?」

  言えるわけがない

  言ってしまったら

  あの優しいカミサマは消されてしまうだろうから

  「・・・・いや・・・なにも無かったさ」

  彼らは確実に気づいているだろう

  でも、彼らは問わない

  それが彼らの優しさ

  千年前から変わらぬ優しさ

  だからこそ




  ”姫・・・姫は意地悪なお人だな”

  ”何がですか?”

  ”彼らの優しさに甘えて、自分は危険な目にあい、彼らを傷つける”

  ”傷つけたのはあなたでしょう?”

  ”姫が彼らに守られていたのなら、私は姫に手を出す事は出来なかったんですよ?”

  ”あなたが私の心を奪ったんでしょう?”

  ”ええ、でも・・・”



  夜、珠紀は境内にいた

  「きれいな月」

  月には不思議な魔力があるというけれど

  「この世には沢山のカミサマがいるんだもんね」

  八百万の神により成されるこの世界

  その八百万の中に、大好きな真弘先輩や、その他の守護者の皆も入っているのだろうか?

  そして・・・

  「あの・・・とても優しいカミサマも八百万の中の一」

  祐一先輩も拓磨も慎司君も遼も事情がよく分かっていない卓さんも・・・そして真弘先輩も

  私の嘘なんて分かっているはずなのに

  「千年前だってそう」

  私があのカミサマを殺した

  その事を彼らはわかっていたのだ

  それなのに

  ”姫は何も悪くないのです”

  その言葉が一番残酷だって知ってた?

  自分の咎は咎ではない

  彼らの咎は彼らの咎なのに

  私だけが特別

  そんなの・・・

  「非道徳的なんだよ」

  彼らは私を人として見てはくれなかった

  「私は大切な玉依姫なんだもんね」

  きっとその行動は、彼らからしても無自覚の行動

  私を人として見てくれたのは、あの優しいカミサマだけ

  そう思想に耽っているときに聞こえてきた声

  『姫様、お迎えにあがりました』   

  「・・・アナタは、結局勝てなかったんだね?」

  『ええ・・・もう姫の言う優しい私は消えましたから』

  「狂気の強さは優しさに勝る・・・」

  『そうです。姫もその気持ちよく分かるでしょう?』

  「私が感じた訳じゃないもん。私じゃなくて、千年前の玉依姫なら感じたんじゃないかな?」  

  『そうでしょうね、姫はいつも孤独でしたから』

  「やっぱり孤独だったのかな?」

  『私が知る限りでは、姫はいつも孤独でしたよ』

  でも

  『クウソと居るときは、とても幸せそうな顔をしてましたが』

  「そりゃあ、私を人として見てはくれていなかったけど、大好きだったんだもの」  

  『その顔を見るたびに、私の狂気は膨らんでいったんです』

  「だから、その塊が今ここにいるんでしょ?私が”玉依姫”じゃないって知っててもくるんだもんね」

  口に出しては言わないけれど、感心するほどの執着心だ

  『どうして・・・姫は落ち着いていられる?』

  そんな私の態度が気になったのだろう

  「落ち着いて・・・るかな?」

  『とても落ち着いている』

  「そう・・・なんだ」

  なんだか自然と口角があがる

  『何が・・・・面白いんです?』

  「私が落ち着いていられる理由はね、とっても簡単」

  『・・・・・・』

  「私は今とっても幸せ。そして千年前の玉依姫もとっても幸せだったの」

  『何故・・・そう言えるのです?』

  「だって・・・」

  「・・・・・・珠紀!!!!大丈夫か!?」

  「ね?」

  『・・・・・姫は』

  「大丈夫か?珠紀・・」

  「大丈夫です。それよりも・・・・」

  『姫は幸せだったと?』

  「うん。少なくとも・・・私の中の玉依姫は幸せだったよ」

  『・・・・・だからといって』

  「あなたの狂気が消えるわけではないよね」

  「珠紀?」

  「真弘先輩・・・彼はとても優しいカミサマなんです」

  優しいカミサマを包む凄まじいほどの狂気

  「だから、あのカミサマは私が助けます」

  これは償い

  「珠紀がそこまでしなくてもいいだろ!?」

  「彼だけだったんです!!!!」

  「!?」

  「彼だけが、玉依姫を”人”として見てくれたんです!!」

  『何故姫は、そこまで言い切れるんですか?』

  「あなたは狂気の塊だというけれど、私と会話をしてくれたじゃないですか」

  『・・・・』

  「やろうと思えば、いつでも私の事なんて殺せた」

  「確かに・・・そうだな」

  「なのに殺らなかったなんて・・・昔と変わらずヘタレですね」

  『・・・・・・・・・』

  「自分が窮地に追いやられたときに、目をそらす癖直したほうが良いんじゃないでしょうか?」

  『・・・・珠紀さんでは無いですね』  

  「アナタが馬鹿な事をやっていたので、やむをえず出てきただけです」

  「・・・・玉依・・・姫?」

  「少しだけ待っていてくれる?すぐ、この子に戻るから」

  『何故・・・姫自らおいでになるのです?』

  「それが望みでしょう?」

  『・・・・だから・・・貴女は漬け込まれるのです』

  「シマネ・・・・アナタを苦しめた罪は、私が償いましょう」

  『・・・・なぜ・・・・ここでその名を呼ぶのです!?』

  「シマネ・・・・アナタはとても優しいカミサマ。アナタの狂気は私が沈めます」

  そういって、カミサマを包み込む

  『・・・・私の狂気を取り除いたら・・・クウソの元へと還ってくださいね?』

  ”もちろんよ。私が愛しているのはクウソだもの”

  辺りを光が包み込む

  「・・・・珠紀?・・・・・・大丈夫か」

  「・・真弘・・・・・先輩?」

  「ああ・・・・」

  「・・・・二人は・・・逝ったんですか?」

  「・・・・きっと、逝ったんだと思う」

  「シマネ様・・・優しいカミサマでした」

  「そうなんだろうな。お前に危害を加えたわけでは無かったからな」

  「・・・・助けに来てくれて、ありがとうございました」

  「・・・珠紀が無事でよかった」





  

 

  とても優しいカミサマ

  名も無いカミサマ

  カミサマは名前をもらいました

  その名はシマネ

  シマネにとってその名は

  大切な宝物となりました

  大切な人からもらったものだからです

  その大切な人はシマネに心を奪われました

  その感情は”哀れみ”

  それをお互いに知っていたけれど

  それでもシマネは幸せでした

  最後の最後には

  大切な人は最愛のモノのもとへと戻ってしまったけれど

  ほんの少しでも一緒にいてくれた

  それが彼の幸せだったから

  そして、彼女が幸せになる事

  それが願いだったから・・・  

 
                                   END


あとがき

グダグダな始まり方、終わり方で申し訳ございません
これが私の文才です(号泣
ですが、このお話を完結させられたのは
皆様の応援があったからです
応援してくれた方
このお話を楽しみにしていてくれた方
どうも有難うございました
連載モノをまた出来れば良いなと思っている管理人でした