望みは解放
前編



  名も無い神を

  貴女は覚えていますか?

  貴女に逢いたい

  貴女が愛しい

  もう歯止めが利かないくらいに

  止まらない

  トマラナイ

  止めなければいけないのに

  止まらない気持ち

  この気持ちに気づいたときには

  もう遅かった

  想い方を間違えてしまった私を

  貴女は許してくれますか?

  止めてくれますか?

  幾星霜もの永い時によって

  歪んだ気持ちを・・・







  鬼斬丸の完全封印

  陰陽を操る鏡の破壊

  時は流れてゆき

  珠紀を含める守護者達は大学生となって二度目の夏を迎えていた

  祐一は大学3年

  真弘、珠紀、拓磨、遼は大学2年

  慎司と美鶴は大学に入ってから初めての夏となる

  守護者と玉依姫、言蔵の者

  全員が村から出るのは危険だと思ったけれど

  そんな私達の変わりに、年長者の卓さんが村を管理している

  しかし大学が長期休みになったことにより

  高校時代と全くかわらぬ風景がそこにはあった  

  「もーらいっ!」

  「あぁ!!それ私が狙ってたやつなんですよ!?」

  「んなの知るか!!早いもん勝ちに決まってんだろうが!!」

  久しぶりに帰ってきた我が家

  しかし、流石卓さん

  埃一つ無かった

  「先輩方、帰ってきて早々喧嘩しないでくださいよ?」

  「せっかくゆっくり出来るってのに、珠紀も真弘先輩も元気ですね」

  「うるせぇぞ拓磨!!」

  「真弘落ち着け。そんなことで熱くなるより、勉強で熱くなってはどうだ?」

  「そういえば、鴉鳥君の成績はどうですか?狐村君」

  「大蛇さん・・・このままじゃ真弘は」

  「おい祐一!!!深刻そうな顔をすんじゃねぇよ!!」

  「もう一つ言えば、2年生組は単位を落として留年しそうです」

  「祐一先輩・・・そんな本当に起こりそうな不吉なこと、言わないでください。」

  「今回ばかりは同意見だ、赤頭」
 
  「祐一先輩・・・長期休暇くらい勉強のことは忘れさせてください」

  楽しい時間が過ぎていく

  だが、時間が過ぎていくと共に

  彼も意思とは関係なしに、動き出していたのだ

  



  



  「姫様ー!!姫様ーーー!!!!どこに居らせられるのだ!?」

  今の感情は、半分くらいが怒りだった

  「姫様!!!いい加減に・・・・でてきなさーーーい!!」

  どうして私がこんなことを・・・

  冗談ではない!!

  そう思いながら姫を探すのはもう2月目になる

  「姫に対する言葉遣いがなっていないな」

  「うるさい、鬼!!まったく・・・なんで私がこんなことを・・・」

  「お前が馬鹿なことをしたからだな」

  「まったくです。我らが姫に悪戯心に近づこうとは・・・馬鹿としか言いようがありませんね」

  「うるさい!!だったら俺を消せばよかっただろう!!」

  「姫のご温情のおかげで存在しているのだ。感謝しろ」

  「消されたほうが良かったわ!!」

  「そういうと思って、わざとお前を姫のお目付け役にしたんだよ」

  ちょっとした悪戯心だ

  ここらで一番の霊力を持っている者

  そいつにちょっかいをかけたかっただけだ

  だが、それが間違いだった

  「姫に無礼を働くとはいい度胸だな?」

  姫に使える神々の霊力は底知れないものだった

  消される

  そう思ったとき

  「その神は、ただ悪戯したかっただけでしょう?なら良いじゃない。」

  姫は笑いながらそう言った

  「だが姫!!」

  「じゃぁ、貴方方がこの神の処分を決めればよろしいのでは?消すのは無しよ。」

  馬鹿じゃないか

  悪戯にとは言えど自分を狙ってきた相手を生かしておく?

  そんな姫様がいるなんて思ってもみなかった

  「・・・・姫がそう言うのであれば何もいいません。」

  ほら、守護者ですら呆れ・・・ん?

  「流石言蔵ですね」

  「姫が言い出したのですから、仕方が無いでしょう?」

  「・・・生かしておくとして、どうするんだよ?」

  「姫のお守りをしていただきます。」

  ・・・・は?

  「それはいいな」

  「俺も賛成だ」

  「酷な罰・・・・・・違った。処分だと思う」

  「哀れだな」

  「何故お前らは私に姫の近くに居ることを罰とする!?」

  「「「「「「後々分かることだ」」」」」」

  このときに気づくべきだったのだ

  消えたほうがマシだと

  「そなたの名はなんと申す?」

  「俺に名などない」

  「では私がつけよう。そうだな・・・そなたは____











  誰にも言わないでいることがある

  守護者の皆にも

  真弘先輩にすら言ったことが無い

  時々風に乗って聞こえてくる、哀しそうな声

  私に救いを求める声

  空耳。違う

  その声を聞くと、胸を締め付けられるのだ

  ぼやけた情景が頭の中に流れる

  そのたびに泣きたくなる

  何故そんなに哀しそうな声で

  私を呼ぶの?

  アナタは誰?




  「ほぉ・・そなたは私の居場所を当てるのが得意らしい。」

  「私が必死に姫を探しているから見つかるのですよ!!」

  だから

  「断じて!!得意ではありません!!」

  「だが、守護者達より私を見つけるのが早いわよ?」

  嬉しくない

  嬉しくなんか無い

  だが、姫の嬉しそうな顔を見ると何もいえなくなる

  そのときには引き返せたのかもしれない

  だが、もう私は
  
  引き返せないところにいるのだ
  
  その事にはっきりと気づいたのは

  姫と鴉の関係を知ったときだった

  

  「姫、また今日も彼を苛めていたそうそうじゃないか」

  「クウソにはそう見えたのですか?」

  「俺じゃなくともそう見えただろうな」

  「酷いですね。私はただ彼と仲良くなりたいだけよ」

  「言ってることと行っていることが逆だぞ」
  
  「彼と仲良くなりたいのもあるけれど、最近は貴方が私を探して来てくれないから拗ねてるいるんですよ」

  「だから逢いに来ているだろう」

  「クウソは優しいもの」



  幸せそうな顔

  その顔を引き出すのは私ではない

  苦しい

  クルシイ

  でも、姫の幸せを切に願った

  そんなときだ

  心の闇に取り付かれたのは・・・






  

  ”鬼がこの村にも・・・”
  

  鬼が来る

  姫は鬼から村人を守らなければならない

  そうなれば、姫が傷つくかもしれない

  姫の幸せを願う私には耐え難い状況だった

  「姫。貴方が鬼の所へ行く前に私が現状を見てまいります」

  これはけじめ

  そして私に唯一できること

  「・・・・本気ですか?」

  心配そうに聞いてくる姫

  「本気です」

  「今度こそ、消えてしまうかもしれないんですよ?」

  「危険な仕事だからこそ、姫にお願いがあります」

  私を解放して・・・

  「私がこの仕事から帰ってきた時は、私を姫から解放してください」

  姫をまっすぐと見つめる

  姫の目は揺らいでいた

  「私がしてしまった過ちを0にするには十分な仕事でしょう?」

  嫉妬という柵から

  解放してください


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