君は幸せにならないといけないんだ



  ”おいていかないで”



  昔から心にある想い

  心に残る傷

  ”ただずっと一緒に居たかった”

  愛しているから

  ただ傍に入れればよかったのだ


  それから、私たちはいろいろな場所に遊びに行った

  一緒にいるだけでホッとした

  けど、何でホッとするのか

  それは分からなかった

  ただ、時々何かが頭を掠める

  「千鶴!今日はどこ行く?」

  学校が終わった後の公園での待ち合わせ

  あの日からずっと放課後はそこに行く

  そして、ただ一緒に話す

  時間があれば、遊びに行く

  それでも、思い出せない何か

  「うーん・・・・・桜。桜見に行きたいな。」

  「桜?別にいいけどさ・・・この時期に咲いてるとこなんてあんのか?」

  季節は初夏を過ぎ、秋序盤

  桜はとうの昔に散り、今は冬・春へ向けての準備期間

  「・・・・そ・・・そうだよね!ごめんね?」

  自分の提案が恥ずかしかったのか、千鶴はほんのり頬を朱に染めていた

  「いや、別に構わねぇけど・・・。」

  しゅんとしている千鶴を見ているとなんだか頭をかすめるものがあった

  ”  くん・・・・桜・・・きれ・・・・・・”

  あぁ・・・・綺麗だな・・・

  ”・・・・かない・・・・・で・・・・・”

  泣くなよ・・・・
 
  俺は・・・お前のことが…

  ”ずっと・・・・傍に・・・・・”

  それと声が聞こえた瞬間、横にいる千鶴をみた

  なぜだか分からないが、そうするのが当たり前のように

  そして、目を奪われた・・・

  千鶴は泣いていたのだ





  置いて行かないで!!


  心からの願い


  ”俺は・・・・”

  ずっと・・・傍にいて・・・・

  ”お前のことが・・・・”

   大  好  き  だ  よ


  どうしてだろうか?

  涙が止まらない

  私は何を望んでいるのだろうか?

  何を悲しんでいるのだろうか?

  夢の中の声が聞ければ・・・真実が分かるのに

  「・・・・千鶴?」

  驚いた

  なんで千鶴が泣いているのかが、分からなかったから

  「・・・・ご・・・ごめんなさい!いきなり泣いたりして・・・」

  「いや・・・別にいいけど・・・・・さ・・・・」

  俺はたじろぐ

  「何かあったのか?」

  「・・・分からない・・・・けどね・・・」

  千鶴は何かを言おうとしたのだろう

  だが、でた声は思っているものとは違った

  「・・・・薫・・・。」

  「っえ?」

  千鶴が突然つぶやいた言葉に俺は振り返る

  「千鶴・・・こんなところにいたんだ?」

  「う・・・うん。ごめんね、薫」

  「別にいいけど」

  そういって薫は俺を見る

  「どうして最近、こいつと一緒にいるわけ?」

  「なんでって・・・」

  「別にいいじゃん?俺が千鶴と一緒にいたいんだからさ」

  「へ・・・平助君!」

  千鶴は赤くなっている

  よくよく考えてみれば、赤面ものだ

  だが、薫の鋭い視線を感じる

  「へぇ、じゃぁ聞くけどさ、どうして千鶴と一緒にいたいわけ?藤堂。」

  「別にお前には関係ないじゃん。」

  「関係あるんだよ。お前も・・・千鶴も覚えていないだけだ・・・。」

  薫は呟いていた

  「は?何言ってんの?」

  「・・・藤堂、僕はお前を認めない」

  鋭いまなざしを正面から受ける

  「・・・お前に認めてもらう必要はないと思うんだけど?」

  「お前は・・・千鶴を不幸にするだけだ!!」

  薫は叫びだす

  「僕は千鶴を不幸にするやつは許さない!」

  殺気のこもった目だった

  「はぁ!?何いってんだよ!何時、俺が千鶴を不幸にしたんだよ!」

  「お前が覚えていないだけだ!!どれだけ・・・どれだけ千鶴が苦しんだことか!!」

  「薫!!!」

  千鶴が薫の言葉をさえぎる

  「薫、何言ってるの!?私は平助君にひどいことされたことなんか無いよ!?」

  「千鶴は・・・・千鶴も藤堂も覚えていないだけだ!!!」

  「薫・・・・」

  「僕は・・・・僕はお前を認めない!千鶴を不幸にしたヤツを許すつもりはない!」



  僕があの時代で、再び千鶴にあったとき

  千鶴は人形のような目をしていたんだ

  人間を恨んでいた僕

  人間を好いていた千鶴

  千鶴は人間を好いて不幸になった

  そんな千鶴の感情を失った姿を見た瞬間

  妹に裏切られたと思っていた僕の中に
 
  妹を大切だと思う心ができたのだ

  それは歪んだ感情と分かっていた

  でも、それでも良いと想った



  何を言っているのか分からない

  なんで、薫があんなに怒ったのか

  そんな自分がもどかしい…



  「千鶴!さっさと帰るよ!!」

  そういって薫が私の手を引く

  「っちょ・・・ちょっと薫!」

  「ま・・・っまてよ!!」

  平助君が薫を呼び止める

  すると薫はピタっと止まり

  後ろを見る

  「なんだよ。」

  すっごく機嫌が悪い

  「千鶴を不幸にってどういうことだよ。」

  「…自分で思い出せよ!僕がお前に教えてやる義理はない」

  そういって薫は再び千鶴の手を引っ張っていく

  「っちょ・・・薫!・・・・・・・・じゃ・・じゃぁ平助君またね。」

  「あ・・・ぁあ!」

  その日はそのまま家に帰った

  そして考える

  "千鶴を不幸にしたヤツを許すつもりはない!"

  あの言葉は・・・目は・・・本物だった

  「どういう・・・意味なんだよ・・・」

  自分は絶対に千鶴を不幸にすることなんてしていない

  だが・・・覚えていないだけだとアイツは言った

  そしてこの間の練習試合の時を思い出す

  ”君 も ・・・・忘れてしまったんだね”

  あれは・・・あれはなんだったのだろうか

  君も・・・そう、”も”と彼女は言ったのだ

  そして薫の言っていた言葉

  ”千鶴も藤堂も覚えていないだけだ!!!”

  だとすると、”も”というのは

  千鶴と俺だ

  「何を・・・忘れてるってんだよ・・・・」

  思い出したいのに思い出せない

  ・・・・もどかしい

  そんなことを考えていた

  だが、頭に何かが流れ込んできた


  ”俺が消えるときは・・・俺がお前を殺す”

  ”うん・・・・うん。”

  ”そして生まれかわって・・・”

  そこで視界が深紅に染められる

  その赤が血だと気づき
 
  俺が死んだということにも気づかされる

  そう・・・

  彼女を抱きしめながら

  俺は死んだ

  否、死んだというよりは

  灰になって消えたというべきだろう
 
  そしてもう一つ思い出す

  ”俺がお前を殺す”

  それは愛しい人への約束

  果たせなかった約束







  そう ・・・・

  果たせなかったのだ



  ただ

  ”今”が過ぎることを脅えている

  幸せがなくなることを恐れている

  離れたくないのだ

  離れたくない・・・・

  貴方と共に居たいのです




  世界が静寂へと導かれる時刻

  千鶴はふと目が覚めた

  「平助君?」

  隣にあるはずのぬくもりが無い

  ふと不安になる

  「・・・平助君?」

  すると待ち望んでいた声が聞こえた

  「どうしたんだ、千鶴?」

  私を安心させるように微笑んでくれる。

  「平助君が・・・・いなくなるような気がして・・・・。」

  彼は何も言わない

  ただ微笑んでいただけ

  「まだ・・・・大丈夫だから。安心して眠りって・・・っていっても無理か。」

  無理に決まっている

  「まだ・・・・・。」

  いつかは消えるのだ

  「”まだ”大丈夫だから」

  安心させるように笑いながら言ってくれる

  「・・・・・・・でも・・・・もうそろそろなんだよね?」

  泣かないように声が震えないように・・・

  そんな私をしばらく見た後

  平助君はため息をついた

  「・・・・・・・・・嘘は言えないよな」

  彼は意を決したように改めて私を見つめる

  「・・・・・・・本当は・・・・本当は・・・・もう長くないんだって・・・自分の体だから・・・」

  ”それぐらい分かる”

  とでも言いたげな

  「・・・・・・・・・・・・おいていかないで・・・・。」

  おいていかないで・・・・

  一人にしないで・・・

  私は平助君と一緒にいたい

  「・・・・でもな・・・ちづ「一緒にいたい・・・平助君がいないのに・・・生きてなんていれない!!!」

  我侭だって・・平助君を困らせるってわかってる

  でも・・・

  これだけは譲れない

  「・・・・・・・・・・じゃぁ・・・・俺が消えるときは・・・・」

  彼はしばらく悩んだあと覚悟を決めたように言った

  「俺がお前を殺す。」

  やさしい声音

  「うん・・・・っうん。」

  「そして生まれ変わって・・・・



  ”また千鶴に恋をするんだ”



  それから一月ともしないうちに

  俺は灰となって消える

  千鶴の心を殺してから

  灰となって輪廻へと身をゆだねた

  最後まで千鶴の手を握りながら______




  ごめん・・・

  ごめん・・・

  でもやっぱり・・・

  俺には千鶴を殺す事はできないんだ




  「な・・・・なんだよ・・・これ」

  俺はただただ呆然としていた

  それは俺が死んだことへの驚きではない

  俺が死ぬとき抱きしめていた・・・

  少女への驚き

  抱きしめていた少女の顔は

  千鶴に酷似しており

  血まみれだったのは確かに俺だったのだ

  「覚えているとか・・覚えてねぇだとか・・・」

  それはこのことなのだろうか?

  ひどく頭が混乱する

  そんなときだ

  「平助、いるか?」

  その声と共に部屋の扉が開く

  そしてそこに立っていた人物を見て

  あぁ・・・聞けばいいのだ

  そう思った

  「平助?」

  「なぁ・・左之さん。」

  「?・・・どうかしたのか、平助。」

  「覚えているとか、覚えていないとか・・・それってどう意味だよ?」

  その瞬間左之さんは驚いた顔をする

  「なぁ・・・どうして俺は千鶴を抱きしめながら死ぬんだよ?」

  疑問は絶えない

  言葉が止まらない

  「どうして、俺は全てを忘れているんだよ?」

  「平助・・・お前・・・」

  「千鶴を・・・・殺せなかったんだ!!千鶴が苦しむのを分かってて!!!」

  約束したんだ

  でも・・・

  どうしてもできなかった

  千鶴が苦しむのが分かってて・・・

  「なぁ!?俺は・・・どうすればいいんだよ?」



  「薫!痛いよ?」

  そういうと薫は手を離す

  「強く引っ張りすぎた、ごめん。」

  「う・・うん・・・。それと・・・」

  「藤堂のことなら謝らないよ」

  「どうして?薫・・・」

  「藤堂がいけないんだ・・・・」

  だが・・・・

  「藤堂が約束を守っていたとしても・・・・」

  僕はお前を許さなかった
 
  「・・・・・・・約束?」

  「千鶴は・・・思い出すまで知らなくていいんだよ。」

  そう・・・・知らなくていいのだ

  知ってしまったら・・・

  千鶴は壊れてしまうから



  どうして?

  どうして約束を破るの?

  私を一人にしないで・・・

  一人は嫌!!!

  平助君が居ない世界なんて・・・

  何を意味するの?


  千鶴を裏切った俺を

  千鶴は許してくれる?

  「平助、一回落ち着け。」

  左之助は、気が動転している平助を一回落ち着かそうとした。

  だが、あまりの情報が頭に流れ込んできた平助にはその言葉は届かなかった

  「どうして・・俺が・・・千鶴を?」

  「平助!!」

  そういって左之助は平助の頭をたたく

  「左・・・之さん。」

  「落ち着いたか?」

  「あ・・・・あぁ」

  「お前は何を 見た ?」

  左之助は落ち着いた様子で言う

  「昔?俺が・・・羅刹になってた・・・」

  「さっきの様子じゃ、最期のことも思い出したようだな・・・」

  その言葉に平助は反応する

  「左之さ「まぁ黙れ。」

  そういって左之助はなにやら考えていた

  そうやってしばらくして、口を開く

  「俺もあんまり知らないがな、お前の最期は千鶴から大体聞いた。」

  それはあまりにも残酷な最期だった。

  千鶴を思うがゆえの行動が、千鶴を最も傷つけることになったのだから・・・

  「俺はな、お前の行動が間違っているとは思わねぇさ。」

  平助は間違った行動などしていなかったのだから・・・

  「けど、軽率だったとも思うな。」

  先のことを考えられなかった

  それがいけなかったのだ

  欲を言えば先のことを考えて、そして最期を迎えて欲しかった

  だが・・・

  「お前が何をしても・・結果は吉へとは動かなかったと思うぜ?」

  千鶴をもし殺していたのなら

  そしたら平助は今

  とてつもない痛みを感じていたであろう。

  今の世界で再びあったあのとき

  もし平助が千鶴を殺したあとの転生だったのならば

  「お前がやったことは間違いではないさ。」

  あとは・・・

  「千鶴が耐えられるかどうかの問題だったんだからな。」

  「でも・・・さ。それじゃぁ・・・俺が嫌なんだよ。」

  どうしても譲れないもの

  それは、千鶴の守りたいという気持ち

  それだけ

  だがそれを違えてしまったのは自分なのだ

  そして、それを千鶴のせいにはしたくなかったのだ

  「左之さん・・・俺千鶴にあってくる。」

  今、話さなければいけないのだと思う

  今全ての決着をつけるべきなのだと思うのだ

  それはたんなる予感

  全てを決める

  そんなカッコいいことなんていえない

  でも、今の自分にできる最善の努力をしたい

  「千鶴の考えていることが知りたいんだ。」

  そういう平助の目はまっすぐで、

  これなら大丈夫だ

  そう思った

  前世からの仲間だったからこそ、心配だったのだ

  ましてや、最期をしっているから・・・

  誰も悪くはないのだ

  唯一の問題点は

  あの時代に生きていたこと

  ただそれだけ

  だが、その時代に生きていたからこそ

  出会えたのだ

  若さゆえの迷いだったのだ

  鬼という存在があったから

  羅刹という存在があったから

  それは全て

  善であり非であり

  その2つがあったからこその

  出会い

  その2つの存在があるからこその

  悲劇
 
  そして

  おきてしまった昔

  過ぎてしまったことは変わらない

  いくら抗おうが無意味なのだ

  あとはどれだけ耐えられるか

  生と死は隣りあわせなのだ

  それは新撰組にいた

  そして羅刹隊にいた

  平助にはよく分かっていたこと

  だが、それでも怖かったのだろう

  消えることが

  千鶴を置いていくことが・・・

  「言って来い。平助」

  そういって左之助は平助を送り出す

  できるならば

  今度こそ、悲劇を幸福に・・・

  哀れな過去を忘れられるくらいの幸せを・・・・



  確かめたいことがある

  千鶴の気持ちを・・・

  もしかしたら恨まれているかもしれない

  でも、そのときはそのときに考える

  もう後悔はしたくないから

  「はぁ・・・はぁ・・・・」

  千鶴に会いたい

  確かめたい

  そう思い、ずっと走っていた

  そのおかげか、今は千鶴の家の前に居た

  「・・・・」

  チャイムを押せばいい・・・

  押せば千鶴にあえる・・・

  だが、勇気が出ない

  先ほどの映像が頭を掠める

  千鶴に嫌われたら?

  嫌なことしか考えられない

  そんなときだった

  携帯の着信がなったのは

  「・・・千鶴?」

  その着信は千鶴からのものであったため、俺は急いで電話に出た

  「千鶴!?」

  だが、

  「残念。僕は薫だよ。」

  「・・・なんか用かよ?」

  「今お前、俺んちの前に居るだろう?」
  
  「おまえんちじゃなくて千鶴んちにきたんだよ。」

  「まぁどっちでもいいさ、・・・・藤堂、俺と一回話しあおうよ?」

  「いやだ。」

  「その答えは聞かない!俺はずっとお前が憎かったんだ!!話す権利ぐらいはある。」

  あまりにもまっすぐな薫

  「・・・俺も、前からお前に聞きたいことがあったんだ。」

  「僕が答えられるかぎりでならいいさ。」

  そういって俺と薫は、近くの公園へと行く

  「で、聞きたいことってなんだよ?」

  「千鶴のことだよ。藤堂は千鶴のこと・・・どう思ってた?」

  過去形・・・か

  「千鶴のことは愛しているさ。昔も・・・・今も。」

  「じゃぁ、藤堂が死んだ後の千鶴を知ってる?」

  「・・・さっき昔のことを思い出した。左之さんにも聞いた。」

  「じゃぁその上で、千鶴にあいたいっていうわけ?」

  「あぁ、今会わないと後悔する。俺も・・千鶴も・・・。」

  出会うことで千鶴が苦しむかもしれない

  でも、出会わなければ後悔する気がするのだ
  
  あの時、何も伝えずに逝ってしまった

  だから・・・再びであった今は、ちゃんと話し合いたい

  「もう、後悔だけはしたくないんだ。」

  「・・・・じゃぁ会わせてやるよ」

  「・・・・・・は?」

  「だから、会わせてやるっていってるんだよ」

  あまりにあっさりした回答にあっけに取られた

  「お前・・・俺を千鶴と会わせたくないんじゃなかったっけ?」

  「会わせたくない。今もお前の顔見てるだけで殺したくなるくらい」

  それはもう、日常会話をしているかのようなくらいサラッと言われた

  「あっそ」

  「でも、過ぎたことなんだ。お前には昔のことは解決してもらう」

  そして千鶴

  全てを解決してから

  今度こそ幸せになって・・・?