不安に
なる

6月中旬のある日
梅雨真っ盛りな時期のため
日が射すことは稀だった最近だが
思わず顔を覆い隠してしまうような日差しが射す
そんな梅雨の湿り気を少し残しながらの
猛暑のような天候の中、平助は千鶴を探していた


「千鶴ー!」

新撰組という隊務が終わってから、半年が経つ
平助と千鶴は、千鶴の故郷だという
鬼の一族―――――雪村の一族が居た村に身を寄せていた
焼き払われた後だったが、数年のうちに自然は少しずつ回復していた

「ちづるーーー?」

そんな静かな村で平助の声だけが響く
二人きりの村だからこそ
千鶴にこの声は届いているはずだ



千鶴が近くにいるのならば


千鶴が平助の声に応えないことはない
そんな性格なのだから
そんな千鶴からの応えがないということは
家の中および周りにはいないのだろう
そう思い、平助は家をでて千鶴を探す
この村にきてから、清水を飲んでいるとはいっても
羅刹の自分には昼の太陽はまだつらい
それでも平助は千鶴をさがす


家をでて、近くの小川に行く
そこは二人の場所
村自体も二人の場所だが・・・
それとは違う
二人だけの安らぎの場所
いるとしたらそこだろうと平助は思い来た
すると案の定、そこに千鶴はいた
けれど、声をかけることはできなかった
千鶴の雰囲気が、あまりにも重かったから

(・・・千鶴、泣いて・・・るのか?)

息を殺しながら千鶴を見る
平助の目に映る千鶴は
何かを堪えているような
だが強く真っ直ぐした目だった
そんな時だった
ふっと千鶴の顔が歪んだのだ

「・・・・し・・・ぃで」

そんな千鶴から聞こえてきた言葉

「独りに・・・・・しないで・・・」

その言葉をはっきりと聞いた瞬間
平助は千鶴を抱きしめていた







「ごめん」








「ごめん千鶴」

「平助・・・くん?」

「ごめん、ずっと傍にいるって約束できなくて」

「っ・・・・」

「約束はできないよ。でもさ、俺は居なくなっても千鶴を見てる」


”だから独りで泣かないで”


言葉ではいっていない
でも、言葉に気持ちを乗せて伝える

「千鶴が泣きたくなったら、風になって千鶴を抱きしめてやる。」

だから

「だから、悲しむなよ。俺はいつでも千鶴の傍にいるから」









傍にいるなんて約束できない
いつ消えるかわからないから
でも見ているから
だから泣かないで?